本記事でわかること
近年、東南アジアにおけるEコマースの成長率は高く、世界的にも非常に注目されている市場のひとつです。アジア諸国では日本製品の人気は高く、越境ECで海外進出を狙うのであれば注目しておきたい市場であるといえるでしょう。
そこで今回は越境ECの物流にフォーカスをして概要から注意点までをお伝えさせていただきます。初めて越境ECに挑戦される方でもわかりやすく解説していきますので、是非最後まで読んでいただけますと嬉しいです。
越境EC物流の概要
越境ECで海外に商品を発送する際には、発送先の国ごとに日本国内と違ったルールが存在しますので、それらに留意しながら事業に取り組む必要があります。特に関税や禁制品は国ごとに違う上に、発送に必要な書類も英語で作成する必要があり、日本国内に発送する感覚で海外発送を考えていると、思わぬトラブルが発生してしまうことがありますので注意が必要です。
関税について
関税は商品が国境を越える際に課される税金のことで、原則としては商品の購入者=お届け先が負担するものになります。また、関税の他にも付加価値税などの税金が発生する場合もあり、これらを総称して関税等諸費用と表現されることもあります。
関税の金額については国別かつ商品群別に決まっている関税率を商品価格に掛け合わせて算出されます。詳細については今回は割愛しますが、HSコードという商品品目の背番号のようなものに沿って関税率は決まっているため、取り扱い商品のHSコードを調べて適用税率を確認する必要があります。
関税の支払いについては商品のお届け時に配送業者に直接支払うことが一般的です。海外から商品を購入する消費者は、関税が発生する可能性があることを理解しているケースがほとんどですが、消費者が想定する関税よりもあまりに高額になってしまった場合に商品の受け取りを拒否されてしまうケースも中にはあるようです。
そのため、「関税の元払い」という仕組みを取り入れ、関税額分を予め商品価格に転嫁して販売し、事業者が関税の支払い義務を担うことで消費者が支払う必要をなくしてしまうケースもあるようです。
禁制品について
禁制品は国ごとに法律や条約によって送ることができない商品のことを指し、4つの類型があります。
- 法律で禁止されているもの・・麻薬や児童ポルノなど
- 送り先の国ごとに禁止されているもの・・例えばアメリカでは牛肉の輸入が禁止
- 配送キャリアで禁止されているもの・・例えば日本郵便のEMSであればリチウム電池やスプレー缶など
- ワシントン条約で禁止されているもの・・植物、動物など
関税も禁制品も輸入先国が自国の産業を守るためや道徳的な観点で流通することを防ぐ目的があります。取り決めは扱う商品によって千差万別ですので、自社の販売商品がどのような扱いとなるのか商工会議所やJETROなどの専門機関に問い合わせしてみることをオススメします。
必要書類について
越境EC配送で必要になる書類は3種類ありますので、それぞれについて解説させていただきます。後述する各配送キャリアのシステムで発行できるようになっていますが、英語で作成しないといけない部分が多々ありますので、注意が必要です。
- 送り状・・ご依頼主とお届け先の住所、名前など商品の宛先を記載する書類です。各配送キャリアによって専用の書式があります。
- インボイス・・発送する商品の内容や金額、原産国、重量、数量など商品の明細書の役割を果たす書類になります。また、インボイスに記載されている情報が税関に申告されますので、記載ミスなどが発覚すると商品が税関で止まってしまうなどのトラブルの原因にもなります。
- 税関告知書・・日本郵便のEMSでの発送の場合のみ必要な書類です。記載する内容はインボイスと同様の項目が多いですが、税関に荷物の中身を知らせる役割となっています。
これらの書類は海外に商品を配送するためには必須の書類となりますが、前述の通り英語での作成が必要であったり、送り先国によって必要な枚数が違うものもありますので、海外発送のハードルになりがちなポイントになります。
海外配送キャリアについて
越境ECで海外に商品を発送する手段は大きく分けると日本郵便が提供する国際郵便サービスとクーリエ各社が提供する国際宅急便サービスの2種類があります。配送料や配送料の計算方法、送れる国自体にも違いがありますので、自社の商品や宛先国などに応じて最適な配送キャリアを利用することが重要となります。そのため、複数の配送キャリアと契約してから越境ECを始める事業者も多くいます。ここでは代表的な3つの配送キャリアについてご紹介させていただきますので、参考にしてみてください。
EMS(国際郵便サービス)
EMSは世界120以上の国・地域に対して重量30kgまでの商品の発送が可能な国際郵便サービスです。料金は縦横高の3辺の合計が300cm以内であれば容積は関係なく商品の実重量と宛先国で決まるため、容積が大きく軽い商品の配送は料金が割安になりやすいという特長があります。
お届けまでのリードタイムはクーリエサービスの+1〜3日となりますが、中国や東南アジア圏への配送であれば日数に差がありませんので、取り扱い商品や展開国によって一つの選択肢となるかと思います。
FedEx(クーリエ・国際宅急便サービス)
FedExはアメリカを本国とした世界最大手の物流サービス会社です。世界220の国と地域でサービス提供がされており、特長として貨物の3辺合計が330cmまでの大型商材でも対応が可能なことや燃油サーチャージ(燃料割増金)が週単位で更新されることにあります。
原油高が叫ばれる昨今、週単位で更新されるサーチャージ率は原油価格が下落傾向にある場合はタイムリーにサーチャージ率に反映されますので、割安になることがあります。もちろん、原油価格が上昇傾向にあるタイミングでは後述するDHLの毎月更新の方が反映が遅れますので優位に働くこととなります。
DHL(クーリエ・国際宅急便サービス)
DHLはFedExと並ぶ世界最大手の物流サービス会社で本社はドイツになります。ドイツ国内で郵便サービスを展開するドイツポストの傘下となっており、世界220以上の国と地域でサービス提供がされています。
FedExとの違いについて、1梱包あたりの最大貨物寸法は120×80×80cmで最大重量は70kgが上限となり、先述した通り燃油サーチャージが月単位で更新されますので、原油価格が上昇傾向にある局面では割安なサーチャージが1ヶ月間は据え置かれることで優位に働くケースがあると言えます。
クーリエ料金の特徴
最後に、大手クーリエ2社の料金に関してお伝えさせていただきます。
両社とも実重量と容積重量の比較で重たい方の料金が適用されるという郵便サービスとの違いがあります。実重量が重たくても容積重量が軽ければ割安となり、逆に小さくても重いものは割高となってしまいます。
つまり、容積重量が適用される場合は梱包サイズが大きいと料金が上がってしまうため、いかに小さく梱包するかというのは配送料を下げるコツの一つとも言えます。なお、容積重量の計算方法は特殊で以下の計算式で重量を求めます。
容積重量(kg)=長さ(cm)×幅(cm)×高さ(cm)
また、注意点としましては原油高などに起因する燃油サーチャージなどの特別料金が発生することがあります。例えば、この燃油サーチャージに関しては直近は20〜30%の割増料金になっていることもあるため、このコストを見誤ってしまうと大きな利益毀損になってしまいます。各社のホームページに詳細が掲載されていますので把握しておくことも必要になると言えます。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございました。今回は基本的な概要を中心に記事にさせていただきましたが、国ごとに落とし込もうとするとより密な情報が必要となりますので、次回は東南アジアの物流事情についてもお伝えさせていただきます。